「世界中が知りたがっている ニッポン競馬のからくり」 増田知之


ニッポン競馬のからくり―世界中が知りたがっている

ニッポン競馬のからくり―世界中が知りたがっている




 現役JRA職員の著者が道新スポーツ優駿に書いたコラムを一冊にまとめた、というこの本。章立てに強引さを感じるところがあったり、誤字脱字が多めだったり、「出版社もうちょっとがんばれ」という箇所がいくつかあったのが残念だけれど、今まで知らなかった知識やJRA職員としての著者の日本競馬に対する考え方をいろいろと知ることができて、コラムの中身の方はけっこう楽しく読めました。


 この本への興味を引くために、本文中から少しだけ抜粋を。

 Sの同僚が担当した二十年前のラジオ競馬実況の話である。靄と雨の二重カーテンがかかった視界のきかない日だった。ゲートは開く。よく見えない。何かしゃべらなくてはならない。
「……スタートしました。八頭が一斉にダッシュ。……さあ、四コーナーを回り、残り二ハロン。先頭は八番の○○○」
 ようやく彼の目にも馬がはっきり見えてきた。彼は気づいた。勘違いしていた。
 レースは七頭立てだった。
(p52)

 パートI国のグレード/グループ競走にはG1から3まで格に準じたレースレーティングが数値で定められている。過去三年間の平均レーティング数値はG1が一一五以上、G2が一一〇以上、G3は一〇五以上(各単位ポンド)なくてはならないという厳しいものである。現実に各グループ競走がすべてそれぞれの数値を満たしているパートI国はない。そこで各基準から「マイナス三ポンド」まで大目に見るという仕組みになっている。
(p94)

 競馬は大人の遊びである。しかし競馬も若い人たちにも興味を持ってもらわないと、将来競馬は先細りしてしまう。若年層をターゲットにした宣伝活動を展開しないと、競馬をする人は年寄りばかりになってしまう。
 だから、若い人向けのCFやポスターを制作すべし、とは私は思わない。自分が十代、二十代の頃の感覚を今、思い返している。まだまだ歳若の頃、競馬は大人の世界だったから心惹かれた。小僧は知らない、大人がなにかいいことしている別天地。背伸びしてでも覗き見たい世界だった。それが競馬の魅力だった。競馬の宣伝は、若い人に近づいていく手法ではなく、逆に大人の特別な世界に憧れさせるような見せ方をしたほうがいいのではないかと思う。
(p28)

 ……ちょっとは興味湧きましたでしょうか。


 ちなみに、この著者、G表記ができなくなったときにJpn表記を押し通した張本人だったり、野平祐二の娘婿だったりと、けっこうすごい人だったりもします(そこらへんのエピソードも本書中に有)。