いまさら準オープンの除外問題を考えてみる (2)JRAの競走馬数が増えた原因諸説
昨日の続き。JRAの競走馬増の原因を探ってみたところ、それらしいのをいくつか見つけたので、須田さんやひしあまぐりさんが指摘していたものと一緒に並べてみた。引用部はその説を説明するためのもので、リンク先でその説が主張されてるわけではないのでご注意ください。
[説1]:JRAと地方の賞金格差の拡大
ここ5、6年のところから賞金が下がりすぎて成り立たなくなっているから、10年前はそこそこよかった時代だと思う。賞金はJRAの10分の1でしょう。預託料は中央の3分の1。そうなると、JRAに馬を置いた方が効率がいいということになってしまう。
■預託料より高い外厩費用 (競馬サロン◇ケイバ茶論)
500万の馬を2頭買って南関東に入厩させるならば、1000万の馬を1頭買ってJRAに入れる方がよっぽど賢い。前者の方が預託料ベースで負担が上回るのに、賞金や手当はJRAの方が遙かに上。もちろん、JRAの競走では、勝つことはもちろん、掲示板に乗って入着賞金を稼ぐことすら困難なわけだが、それでも最終的にはJRAの方が実入りが良い。
経営難から賞金額の大幅削減にふみきった地方競馬は多く、このため、地方競馬の馬主は「収入は減ったのに支出は変わらず」という厳しい状態にあるとのこと。反面、JRAの賞金や手当ての額はいまだに多いことから、「できるなら馬はJRAに」という流れができた、というのがこの説。
[説2]:預託頭数制限の緩和
■JRA平成13年度事業報告書 リンク先はpdf
また、同じく1月1日から預託頭数制限を緩和し、調教師が預託を受けられる頭数枠を、調教師が貸付を受けている定期貸付馬房数(抽せん馬房、認定馬房、トレーニングセール取引馬用馬房及び臨時貸付馬房を含む。)の3倍まで拡大した。
01年に、各厩舎が「最大で馬房数の3倍」まで馬を管理できることに。結果、成績のいい厩舎の管理馬数が増える→その分だけ成績の悪い厩舎の管理馬数が減る→成績の悪い厩舎が馬をかき集めてくる、という流れで競走馬数がどんどん増えた、というのがこの説。
[説3]:メリット制の導入
■"馬房返上"は何を映すか (サラブネット 専門記者のコラム)
メリット制の査定項目には、1馬房当たりの勝利数、獲得賞金のほか、出走回数や出走実頭数(多くの馬を走らせた方がポイントが高い)も含まれる。勝敗に絡むのはハードルが高いが、取りあえず出すだけなら、というわけだ。
04年から始まった、成績のいい厩舎は馬房数を増やし、成績の悪い厩舎は馬房数を減らす、という「メリット制」。この査定項目には出走回数や出走実頭数が含まれるため、各厩舎が馬の数を集めるのにより熱心になった、というのがこの説。
[説4]:出戻り馬の増加
■"出戻り"の考察 進む地方の「植民地化」 (サラブネット 専門記者のコラム)
昨年から中央→地方→中央という移籍の要件が大幅に緩和され、「出戻り」が一気に増加したのだ。従来は、地方競馬で最低5戦し、必要な賞金を加算する必要があったが、昨年からは地方で1勝すれば復帰が可能になった。
01年に地方転出馬の再登録条件が緩和され、「出戻り馬」が急増。これが競走馬増につながった、というのがこの説(ただし、再登録条件は06年にはまた厳しくなっている)。
[説5]:大手馬主(特にクラブ法人)の所有馬数の増加
これについては、下のデータを見てもらうと分かりやすいかと。
注:表中の「推定総出走実頭数」は、総出走回数を農水省発表の「2001年度のJRA馬の年平均出走回数は5.3回」なるデータで割ったもの。ためしにいくつかの馬主でこれと同じ計算をしてみたところ、JRAのリーディングオーナー情報の「実頭数」と近い数字になったので、実際ともそう大きくずれてはいないはず。
参考:99〜05年に馬主リーディングTOP10に入ったことのある、20馬主のJRA年間総出走回数の推移
年 | 総出走回数 | 推定総出走実頭数 |
---|---|---|
2005 | 9856 | 1859 |
2004 | 9332 | 1760 |
2003 | 9696 | 1829 |
2002 | 9154 | 1727 |
2001 | 8309 | 1567 |
2000 | 7133 | 1345 |
1999 | 6614 | 1247 |
参考:総出走回数の伸びが大きいクラブ法人の、JRA年間総出走回数の推移
年 | 社台 | サンデー | ラフィアン | キャロット | ウイン | 計 | 推定総出走実頭数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2005 | 1169 | 1107 | 1179 | 301 | 239 | 3995 | 753 |
2004 | 1100 | 1065 | 1135 | 269 | 220 | 3789 | 714 |
2003 | 1129 | 898 | 1294 | 206 | 240 | 3767 | 710 |
2002 | 958 | 796 | 1161 | 225 | 187 | 3327 | 627 |
2001 | 851 | 823 | 980 | 156 | 131 | 2941 | 554 |
2000 | 819 | 525 | 883 | 126 | 100 | 2453 | 462 |
1999 | 857 | 932 | 136 | 48 | 1973 | 372 |
大手の20馬主だけで、推定出走実頭数は、7年間で600頭あまりも増加(特に03年以前の伸びが激しい)。その中でも特に増えっぷりが目立つのがクラブ法人で、社台・サンデー・ラフィアン・キャロット・ウインの5法人だけで、400頭近く増やしている。JRAの競走馬が増えたのには、ここらへんのクラブ法人の規模拡大などの影響があった、というのがこの説。
ちなみに、ここのところ大手クラブの所有馬数の伸びが止まりぎみなのは、たぶん「一馬主あたりの入厩頭数制限」のギリギリ一杯まで所有馬数が増えたから。馬主会のクラブ法人いびりとして悪名高い「一馬主あたりの入厩頭数制限」も、競走馬数増に歯止めをかけるという点では役に立ったのかも。
[説6]:高齢馬の引退時期の遅れ
調教技術の進歩などにより馬の引退時期が遅れ、その分だけ現役馬数が増えた、というのがこの説。
これについては、全登録馬中の高齢馬の割合なんかを年別に割り出せればいいんだろうけど、私ではそういったデータを見つけてくるのも計算するのも無理でした。